それは、とあるコンビニエンスストアでのこと・・・。
「ショートホープ、2個」
中年男性客がそう言ったので、店員Tは一直線にショートホープシリーズの並ぶ棚へ行って
青いデザインの『ショートホープ』を2箱手に取った。
持ってきた煙草をレジに登録しようとすると、中年男性が口をはさんだ。
「それと ショートホープのスーパーライト2個」
もちろんTにはショートホープのスーパーライトの場所もわかっている。
とりあえず「はい。」と返し、
最初の注文『ショートホープ』をレジ登録してから取りに行こうと、
バーコードをスキャンするT。ピッ。
しかし。
「あれあれ!あれや!」
中年男性がせかす。
「はい。」
Tはレジのキーを急いで「2個」と入力するが中年男性がさらにせかす。
「あれあれあれあれあれあれあれあれ!」
「はい。はいはいはい。」
(なにをそんなにせかしてるんだ?)
ショートホープのスーパーライトを取りにいくTは心でつぶやいた。
「『はい』は一回でええねん!」
(一回「はい」って返事してるのに「あれあれあれあれ」言ったのは誰?)
中年男性のツッコミに、Tが内なる声でツッコミ返す。
すぐにスーパーライト2個もレジ登録し、合計金額を伝えた。
「4点で560円のお買いあげになります」
だが、レジの前には100円玉が3つ転がっている。この中年男性が出したものだ。
「えーと・・・4点なんで、560円なんで」
戸惑うTが説明しようとする。が、中年男性は聞こうともせず、
「2個や言うてるやろ!!!」
「え・・ ああ、最初の『ショートホープ』は要らなかったんですね。」
「さっきからそう言ってるやろ!!」
中年男性は間違いなく「それと」と言ったのだが、
日本語で「それと」は前にあったものに対してさらに追加する場合に使うものだ。
彼はその件に関しては自分が悪いともミスとも思わないらしい。
仮にTの聞き取り間違えで、「それと」ではなく「それちゃう」だったとしても
男性が最初に「ショートホープ」と頼んだのは事実だ。
世間一般で、ただ「ショートホープ」だけ言えば
ショートホープシリーズの標準である青いデザインの箱のものと決まっている。
間違っても「ショートホープ」で「ショートホープ・スーパーライト」は差さないはずだ。
なぜその時点で自分のミスを認めて「あ、間違った」と言えないのだろうか。
なにも謝れとまでは言わない。だが、自分の言い方を棚に上げて
相手のせいにしてしまうのはいかがなものだろう。
━━ もしかしたら相手のせいにしているという自覚すらなく、
そうしてしまっているのかもしれないが。
(とりあえず。)
Tは思った。
ここらでハッキリさせておく必要があるのかもしれない。
タバコ吸う前に日本語おぼえてください(´Д`;)