深夜のことでした。
ひさびさに相方のTくんと働いていた俺が、納品された サンピエール 山崎のパンを
バッカン(納品時に使うカゴ)から売り場へ並べていたときのことです。
一人のサラリーマン風の男性客がきました。
「いらっしゃいませ」
「おいしいおでんはいかがですか?」
俺と相方のTくんは気持ちのいい挨拶とセールストークで迎えます。
しかし。
「(゜Д゜)ハァ〜!? おでん?! おでんは要らん!」
と、いきなり怒り出しました。
なにがあったのか知りませんが、おでんが要らないなら「要らない」の一言でいいと思います。
しかし俺もTくんもそこらのコンビニ店員とは格が違います。
その場は少しも顔に出すことなく、「そうですね、すみません」とさらっと流しました。
しかし、彼は続けました。
「おでんとかな、あんなもん関東人しか食わんわ!」
「あんなもん、フタもしてないで、みんなのツバいっぱい入っとんの食えるかよ! 汚い! フタしとけや!」
さすがにオイオイあんたねと思いましたが、
まあ、この程度はまだまだ許容範囲です。
ちょうどそこで、少し苦笑いしたTくんが
空になったバッカンを店外へ運んで出て行きました。
「すみません、気をつけます」
俺がそう答えると、
彼は何かを探している様子で俺のところへやってきました。
「IFCコーヒーはないのか!?」
声は大きかったのでハッキリ聞こえていましたが、
聞き慣れない言葉だったので、もしかして
『ブラックコーヒー』か何かと聞き違えたかと思い、聞き直します。
「えっと、なにコーヒーでしょうか?」
「アイ・エフ・シー・コーヒー!」
今度は間違いありません。
この男性はIFCコーヒーを探しているようです。
しかし、俺の店にはIFCコーヒーという名前の商品は置いていません。
━━ いや、
もしかしたらカップコーヒー(お湯を入れて作るヤツ)で
今週新発売されたばかりのとかだったら、
俺も把握できてない物があるかもしれない。
そう思った俺は確認してみることにしました。
「あの、IFCコーヒーというのは、どういう商品でしょうか?」
すると、彼は大きな声で
「IFCコーヒー知らんの!?」
「すみません」
俺にはそうしか答えることができません。
「IFCコーヒー言うたら、ドリップコーヒーや!」
ドリップコーヒーなら売り場は目の前にありましたので、
「申し訳ございません、
ドリップコーヒーはこちらにある種類しか置いていませんので」
そう言って俺が頭を下げながら手で示すと
「(゜Д゜)ハァ〜!? IFCコーヒー言うたら冷凍のドリップコーヒーや!!
こんなとこ(普通の棚)にあるわけないやろ!!」
「えっ、あ・・・そうなんですか? すみません、よく知らないもので」
「IFCコーヒーも知らんの?! IFCコーヒー知らんとかモグリやで!?」
相変わらず大きな声です。
すぐ隣にいるんだから通常の声でわかりますし、
知っていたとしても、IFCコーヒーはローソンの発注システムには登録されていないので
俺がどんなにコーヒー通でも置くことはできません。
彼はそんなことはおかまいなしに
「この店だいじょうぶか!?
IFCコーヒー知らんって、頭おかしいんちゃうか!?」
と連呼。
そのあとは、レジに烏龍茶を持ってきたので「いらっしゃいませ」と挨拶したら
「(゜Д゜)ハァ〜!? なにが『いらっしゃいませ』や!」
と怒鳴って、お金を払って去っていきました。
ところで。
知らなかったら頭がおかしいという『IFCコーヒー』なるもの、
みなさんはご存じですか?
ちなみにその男性客、今でもたまに来ているようなので
そのうち『タンホイザーゲート』か何か、彼がまず知らなさそうなものについて尋ね
「知らんのモグリやで!?」と言ってみるのも一興かなと思ってます(笑
※タンホイザーゲートとは、通常物質が光速を越える唯一の方法である。
詳しくはSFオタクかGAINAXオタクの友達にでも聞いてみてください。
たぶん1時間くらい語られるハメになると思います(´ー`*)