不気味な温室



2人は四方を釘で打ち付けられた 『開かずの扉』 を発見する。


なんとかして開けようと思ったが、どうにもできない。


ふと、唐突に奈美が言った。


『ねぇ! お腹空いちゃった。 何か食べよう?』



そう言うと、奈美はスタスタと歩き出し、

当たり前のように手前の扉を開けた。



―――台所だった。



なぜ奈美はここが台所だと解ったのだろう。。。

色々な疑問が頭を巡ったが、

隣の食堂から良い匂いがするのが気になった。


行ってみると、美味しそうな料理が並べられている。

2人は席につき、食べ始めようとする。


美味しそうなスープ・・・。

よくよく見ると、毛の生えたものが入っている。

(・・・毛ガニ?)

(毛蟹だとしても、殻のまま入れるだろうか・・・)

箸でその物体を持ち上げてみる。


怪しい模様をした 蜘蛛 だった。


見るからに毒蜘蛛だ。

奈美も声をあげる。


『これ見てっ!』


肉料理を見ると、それは 猫の首 だった。



『はは・・はははは ゲテ物 食いの変わった主がいるんだな。』


恐怖を隠し、そう明るく言ってみた。




どこかで 女の叫び声が聞こえた。


ヒィィィィッ


『今! 女の声が聞こえなかった!?』


奈美は、


『そぉ? 気のせいじゃない?』


ヒィィィィッ


今度のは奈美にも聞こえたようだ。

2人は恐怖を感じながらも、声のした方へ向かう。


その廊下は、幅も高さも狭くなっており、

まるで表通りから裏路地へ入った感覚だった。

懐中電灯で奥を照らすと、

まるで秘密の研究室のような、サビて真っ黒になった鉄の扉があった。


扉を開ける。


突然風が吹いてきて、雨が顔にあたる。

どうやら裏口の扉だったらしい。


懐中電灯で、辺りを照らしてみる。


少し離れた所に、ガラス張りの温室を見つけた。


室内に光を当ててみる。






弟切草が咲いていた。。。





戻ろうとした時、またも風が吹いた。



ヒィィィィッ



声のした方へ光をあてる。

見ると、温室の扉が風であおられ、音を立てているだけだった。


奈美の冷たい視線を感じる。


『あの扉まで競争だ! ソレッ』


明るく、誤魔化すように扉まで走り出した。


『待ってよぉ!』


ドスン!


後ろを振り返ると、奈美が尻もちをついていた。


『転んじゃったぁ。。。』


それを無視し、扉まで走り着く。


そしてある物を見て凍りついた。




 と赤く大きく書かれた扉が風で軋んでいる。



ヒッ!

いつのまにか隣に来ていた奈美が悲鳴をあげる。


『きっとこの家にも 奈美 って名前の人が住んでたんだよ。』


そう奈美に言い聞かせた。


奈美の顔は真っ青だった。